巻頭エッセイ
無口な次男が父親になった
長男と次男が小学生だった冬のある日
可愛がっていた家猫が車に轢かれて死んだ。
長男はワンワン泣いて部屋から出てこないので
夫と次男で庭に墓を作って弔うことにした。
次男は感情があまり表に出ないタイプで
情感の発育に問題があるのではないかと
心配していたほど。
この日も表情から気持ちは察せなかった。
ところが夫が穴を掘り終えても
次男は新聞紙に包んだ亡きがらを抱えたまま
立ち尽くしている。
「寒いから早く入れなさい」と声をかけると
彼は「チクショウ……」と小さく呟いて
亡きがらをぎゅっと抱きしめた。
瞬間、私は気付かされた。
死を悼む豊かで熱い情感が
この子にはちゃんと流れているのだ、と。
それをうまく表に出せないだけなのだ、と。
反抗期になって
「うるさい」とか「くそばばあ」とか
正面から突っかかってきてくれるなら
こちらも受け止め方がある。
感情表現が苦手で口数が少ない子は難しい。
登校拒否になったり
三兄弟の中で次男が一番すったもんだした。
だからガールフレンドを紹介されたとき
とても嬉しかった。
人を愛する能力と
人から愛される魅力
二つをちゃんと持っていてくれたことが。
彼女と結婚して家庭を築き
一人娘ができた。
「この子も人の親になるんだ」と思うと
やっぱり感無量だった。
さぞや無口な父親になると思いきや
「もう嫁にはやれない」とか何とか。
すでに親バカぶりを発揮している。
とかいいながら、初孫だから私も可愛い。
内心バカにしていたのに
携帯の待ち受けを孫の写真にしたりして。
でも利口なおばあちゃんになろうと決めた。
孫にとって一番の存在にはならない。
親の愛情を飛び越えられると勘違いしない。
あなたを一番に可愛がってくれるのは
お父さんとお母さん。
その後ろに私がいる、というスタンス。
ただし、経験上、一番近くにいる親だから
どうにもできないことがある。
親だから子供が言えないこともある。
辛いときや悲しいときは
私のところにおいで。
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