巻頭エッセイ
学校のトイレ掃除に驚いた
私の子供たちはニューヨークで育ったが
毎年、日本の小学校に体験留学させてもらっていた。
6月はじめにアメリカの学校が終わるとすぐ日本へ飛んで行き、
1カ月半ほど群馬の田舎の学校で過ごしていたのだ。
アメリカの学校が休みになるやいなや、すぐに日本へ
向かったのは、子供たちが日本の学校が大好きだったからだ。
夏になると子供は学校に行きたがらないものだが
私の娘は二人とも日本の学校に行くのが
楽しみでしょうがなかったのである。
ある日、娘が嬉しそうな顔で下校してきた。
何があったのかと尋ねてみると、「トイレ掃除をした」と言う。
長靴を履いて、ゴム手袋をはめて、ほかの児童と一緒に
トイレ掃除をしたのだと、娘は満足そうに話したのだ。
私は驚いた。
児童自らが学校の掃除をするなど、
アメリカでは聞いたことがなかったからだ。
掃除をする人を雇うのが当たり前のアメリカでは
想像もできないことだった。
そして、嬉しそうに、満足感に溢れた表情で話す娘を見ながら
日本の小学校の素晴らしさに、私は感心した。
仲間と一緒に校舎を掃除すれば、それが
自分たちのものであることを、子供たちは実感する。
それはパブリックなスペースを
大事にする心につながるに違いない。
もちろん、自らトイレを掃除した子供たちが
そこに落書きをすることなどありえない。
掃除をしてくれる人を雇っていたら
きれいに使用することさえ考えないだろう。
他国にはない素晴らしい教育だと、だから私はとても感心した。
日本人は自分たちの国や社会を否定的に語るのが好きな国民だ。
でも、日本には日本ならではの、素晴らしい教育や習慣がある。
誇るべき、守るべき文化もあるのだ。
群馬の小学校に、子供たちが喜々として通ってから20年が過ぎた。
いまでも日本の子供たちは、トイレを掃除しているのだろうか。
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