巻頭エッセイ

小学校は素晴らしいけれど

 
 

ジェラルド・カーティス コロンビア大学教授

 
 

日本の教育は上へ進むほど問題を抱えている。
小学校は素晴らしい。
子供たちは楽しく学びながら、チームワークも身につける。
かつて世界トップの水準だった中学、高校は
この十数年でかなり劣化した。
公立ではなく私立に入れなければ、と
親が苦労する時代になってしまった。

特に英語教育は危機的状況だ。
いまや英語は外国語ではなく国際語だ。
経済がグローバル化した世界で
仕事ができ、競争ができる大人になるために
英語力は不可欠なのだ。
それなのに日本の英語教育は、英国の植民地だったアセアン
諸国はもちろん、韓国や中国にも大きく遅れをとっている。
たとえば中国には、一度も母国から出たことがなくても
英語でコミュニケーションできる学生が多い。
日本では帰国子女くらいである。
だから親たちは子供を外国へ留学させたり、
インターナショナルスクールに入れようとする。
おかしな話だ。
これからの時代を生きるために必要な能力は
義務教育や公立学校で身につけられるようにするべきである。

大学はもっと問題を抱えている。
文部科学省の規制が強すぎて、それぞれの大学が個性を
十分に出せないし、教授たちは頑張っても頑張らなくても
その報酬はほとんど変わらない。
アメリカの大学では、いい講義をして、いい論文を書けば
給料がほかの教授よりずっと高くなるが、日本には
そうしたインセンティブはない。
年功序列で、競争のない社会になっている。
いい教育をしようという情熱がなければ
いい教授にはなれないが、そのためには
物質的なインセンティブも不可欠なのに。

大学は義務教育ではない。
もっと自由に教育できるようにするべきだ。
有名でなくとも、いい教育をする大学には学生が集まり
そうでない大学は潰れてしまう。
そんな競争原理を持ち込むべきである。
いまの日本の大学は、文部科学省のコントロールが強すぎて
まるで社会主義国か共産主義国のように、私には見える。

 
 
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