[よのなか]科の推進者・藤原和博 お薦めの
「未来を開く本」
「やりたい事が見つからない」夢を持たせる6冊
藤原和博
Fujihara Kazuhiro
1955年、東京都生まれ。 東京大学卒業後、リクルート入社。 在職中から公教育改革に取り組み、2003年、東京都初の民間人公立中学校長(杉並区立和田中学校)に就任。自ら考案した[よのなか]科の実践や、進学塾と連携した夜間塾「夜スペ」の導入など、 さまざまな学校改革に取り組む。著書多数。大阪府知事特別顧問、東京学芸大学客員教授。
構成=田端広英
撮影=岡村智明
上手に疑い、賢く勘ぐる
「複眼思考」の入門書
子供たちが生きていかなければならない社会は、親が生まれ育ってきた社会とは、まったく異なります。
親が歩んできた20世紀型の「成長社会」は、昨日よりも今日、今日よりも明日が、必ず良くなる社会でした。だから、大人の言うことを聞いていれば、親と同じか、それ以上の幸せがゲットできた。「正解」がわかっていたから、「ゴール」も見つけやすかったのです。
でも、子供たちが生きていく社会は、ものすごく複雑で、変化が激しく、多様性が増える「成熟社会」です。そこでは、簡単に「正解」は見つからない。だから、親が「成長社会」の考え方で子供たちの心を燃やそうと思っても、空回りしてしまうのです。
「成熟社会」ではどんなことが起きているのかを理解するための基本書が、社会学者の宮台真司さんと私の共著『人生の教科書[よのなかのルール]』です。
この本では、社会や経済の基本的な仕組みから、ドラッグや売春、自殺や少年犯罪、性転換をめぐる男女の問題など、学校や親が教えてくれないテーマを取り上げ、社会の「現実」についてわかりやすく、かつ赤裸々に語っています。子供たちは、テレビや新聞で報道されたり、学校で教えてくれることだけが、「正解」ではないことに気がつくはずです。
大人の言うことを素直に聞く子が良い子ではありません。正解のない「成熟社会」では、ものごとを自分の頭で判断して進んでいくことが求められます。
本書では、そのために大切な「複眼思考」、一般的には「クリティカルシンキング(批判的思考)」と呼ばれている考え方を身につけることができます。「複眼思考」というのは、上手に疑い、賢く勘ぐることです。
テレビの解説者が言っていることを、「本当にそうかな?」と疑ってみる。表から見ているものを裏返したらどうなるか。右から見ているものを左から見たらどう見えるか。タテ・ヨコ・ナナメ、さまざまな方向からものごとを吟味し、自分の価値観に照らして納得がいく「納得解」を見つけていく方法です。
そのためにも、この本を薦めるのと同時に、親には、子供と一緒にテレビを見るとき、解説者が言っていることをうのみにするのではなく、自分がどう思うかも語ってほしいですね。
「成熟社会」で
夢を描くための必読書
では、そんな時代に生きる子供たちはどうやって夢を描き、それを実現していけばいいのか。その方法を知るための一助となるのが、拙著『「ビミョーな未来」をどう生きるか』です。
「成熟社会」を生きていく上で、車の両輪となるのは、「情報編集力」と「クレジット(信任)」です。「成長社会」で求められていたのは「情報処理力」、簡単に言えば、覚えた知識の中からいちはやく正解を見つける力です。しかし、複雑で変化が激しい「成熟社会」で必要となるのは「情報編集力」。身につけた知識や経験と技術を駆使して、自分の人生を切り開いていく力なのです。
「クレジット(信任)」とは、周りの人から信用と共感を集めること。基本は、挨拶できること、約束を守ること、古いものを大事に使うこと。子供たちが好きなロールプレイングゲームでたとえれば「経験値」のようなもの。経験値を高めれば、ゲームの主人公はより高いステージに進めます。同じように、「クレジット(信任)」を高めていくことは、夢をゲットするためには欠かせません。
(続きは本誌をご覧ください)
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