ドラえもん大賞全国作文コンクール大賞●高校3年・岡部憲和くん

議論が白熱して徹夜も。毎日5時間の家族会議

 
 

まず原稿用紙2枚に好きなように書かせる。
1行でも面白い文が出たら、それ以外、全部書き直し。

 
 

 

同じテーマの作文を
40~50回書き続けた


「息子は作文が下手なんでしょうか?」
 岡部憲和君が小学1年生だったとき、父の孝さんは担任の先生にこう尋ねたことを今もよく覚えている。
「下手です、とはっきり言われました。ショックでしたね。当時、私は大学で教員をやっていたんですが、学者のせがれが文章を書けないとなるとキツイなと。それに書いたりまとめたりする力って、将来どんな職業に就いても必要ですよね。息子を救ってやらなきゃって、あのときは私が思いつめていました」

 そして迎えた小学生最初の夏休み。孝さんによる作文特訓が始まった。ただ、特訓といってもやることは一つだけ。同じテーマの作文を40~50回も書き直させるというものだ。
 当時の憲和君の作文は、小学1年生のわりに、一文がダラダラと長かった。それを「短く書こう。自分だけ喜んでいないで、誰にでもわかるものを書こう」と孝さんは繰り返したそうだ。
「原稿用紙2枚程度だったでしょうか。とりあえず一度好きなように書かせるんです。すると1行くらい面白い文が出てくる。それだけ残してまた全部書き直し。何度もこの作業を繰り返して、最後には親も納得できる作文が一つできました。それを新聞に投稿したら載ったんです。親子で飛び上がって喜びました」
 この特訓で文章力の基礎はできたのだが、その頃はまだ年に一度ほどコンクールで入選するくらい。「作文がイヤで仕方なかった」(憲和君)という苦手意識が、少し薄らいできた程度だった。

 そんな憲和君に転機が訪れたのは小学3年生の夏休み。NPOが主宰する“環境問題について子供同士が話し合う”会議に参加したときのことだ。
「当時の自分なりに考えたことを発表したんですけど、その意見がまったく受け入れられなかったんです」(憲和君)
 話し合った議題はコンビニの前に落ちているタバコの吸い殻をどうしたら減らせるか、というものだった。そこで憲和君は「ポイ捨て禁止というポスターを描いてコンビニに張るのはどうか」と主張したのだが、ほかの5年生の子が「それは前にやったことがある」と言った。
「でも掲示をする前に落ちていた吸い殻を数えたら25本だった。ポスターを張った後では17本。たった8本減らすために絵を描くべきかな?」
 憲和君は何も言えなかったそうだ。
「落ち込んで家に帰って、家族に相談したんです。来年、同じ会議に出るとしたらどうするか、どうして何も言い返せなかったのか。そのときは“実際に手足を動かしていない人の発言に、説得力はない”という話になりました」
 以来、憲和君は家の前に空き缶を置いて、雨の酸性度をリトマス試験紙で測ったり、風向きで酸性雨の降り方がどう変わるのかを調べたり、自分で環境に関する実験を繰り返すようなる。

 そしてもう一つ、岡部家でこの日から始まったことがあった。
「家族の話し合いの時間がものすごく長くなりました。夕食のときから始まって、そこから5時間とか。初めて徹夜したのは、小学4年のときでしたね」(孝さん)



(……続きは本誌をご覧ください)

 
 

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