巻頭コラム

母校に感謝できますか?

 
 
文・大前研一 ビジネスブレークスルー 代表取締役社長
 
 

偏差値の高い学校がいい学校だろうか。僕はそうは思わない。そもそも東大に入学した人間がどのくらい幸せになっているの か。彼らの「その後」についての追跡調査なんて見たことがない。東大合格者数で学校を選ぶなんて女性をスリーサイズで選ぶようなものだ。中身に目を向けて いない。とんでもない話だ。では、いい学校とはどんな学校か。実は、見極めるのは簡単だ。母校のために尽くす卒業生がたくさんいる学校がいい学校である。 在学中に受けた薫陶が社会に出て役立った、あの先生のあの一言が人生の転機になった、あの学校に行ったからこそ生涯の友と巡り会えた、と卒業生たちが感謝 し、母校を思う学校が悪い学校であるはずがない。

 アメリカあたりははっきりしている。多忙なビジネスマンとなっても寄付をしたり、評議員を務めたり、母校のために金も時間も惜しみなく費やす。い つか自分に子供ができたらやっぱりあの学校に通わせたいと願いながら卒業後も母校のために尽くす。日本の進学校は、母校を自慢する者はいても母校に感謝す る卒業生はいない。偉くなり、金持ちになっても寄付さえしない。まるで自分の力だけで偉くなった、と勘違いしている。育った後、親に感謝しない子供と同じ ように母校に感謝しない生徒を出すような学校がいい学校であるはずはない。  学校は、世の中に出るための準備をするところだ。僕はあまり学校に行かない子供だったが、それでも先生のふとした言葉をきっかけに日記をつけるよ うになったり、音楽に興味を持ったりした。おかげで人生が随分豊かになった。いま振り返ってみて、ありがたいと思う。それに高校時代の友達は、特別な存在 だ。  10年後、クラスメートの誰かがアイデアをくれるかもしれない。20年後、友達がピンチを救ってくれるかもしれない。そんな様々な「出会い」のある学校がいい学校なのである。
 
 

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