バンドから四重奏まで!? 誰でもミュージシャンになれる「楽器アプリ」

続・小学生のママに知ってほしいiPad勉強アプリ【第5回】 〜 近畿大学附属高等学校 乾 武司 先生 〜

Apple純正アプリのGarageBand。音楽知識がゼロでも曲作りが楽しめる
ピアノ、オルガン、ギター、ドラムなどなどiPadが多彩な楽器に大変身
Autoplay機能を使えばバイオリンなどの弦楽器でもカッコイイ曲が作れる
Samplerでは生活音など、iPadで録音した声や音をピアノの鍵盤上で演奏できる
DJ気分が味わえるLiveLoopsモード。セルをタップして自在に曲をアレンジ
アプリ紹介者の乾先生(左)と本連載著者の小池氏(右)

物心ついたときから身近にスマホやタブレットがあり、“デジタルネイティブ ”と呼ばれる今の小学生。でもスマホやタブレットですることと言えば、LINEやゲームをしたりYouTubeを見たり……。せっかくなら、もっと有効活用してほしいと思いませんか? 本連載では、教育現場でタブレットを活用した学びに取り組む先生たちの“とっておきアプリ”をご紹介。ゲーム機だった家庭のiPadが、“学びの武器”へと変わります。さりげなくダウンロードして親子でやってみてください!

スタジオジブリ製作の「耳をすませば」という劇場アニメ、観たことありますか? 中学生の主人公、雫(しずく)が、バイオリン職人をめざす少年、聖司に思いを寄せ、悩みながら成長する姿を描いた物語です。作中、聖司のバイオリンにあわせ、雫が「カントリーロード」を歌い、それを耳にした聖司の祖父と音楽仲間が演奏に加わって、即興でセッションをするシーンがあるのですが、昔からこのシーンが好きでした。楽器が弾けるって素敵ですよね。今回は、いままで楽器を習った経験がない方でも、親子で一緒に音楽制作が楽しめてしまう、そんなアプリのご紹介です。

GarageBand(¥600)※

※ iOS 9 以降を搭載した iPhone、iPad、または iPod touch を 2013 年 9 月 1 日以降にアクティベートまたは購入した場合は無料

身に付く力:音楽への興味関心、創造性、試行する力

このアプリを推薦してくれたのは、近畿大学附属高等学校の乾武司先生。同校では、2013年度の新入生から1人1台のiPad環境を用意しています。現在では中高生および教職員約4000人が学校生活の中で日々iPadを使っているそうです。iPadにはあまり制限をかけず、自由度の高い運用をしているのが特徴です。今回はそんな近大附属高校でICT教育推進室室長をされている乾先生に、「GarageBand(ガレージバンド)」の魅力とおすすめの使い方について教えてもらいました。

「GarageBandは非常に優秀な音楽制作ソフトで、機能もたくさん。小学生なら、まずは純粋に楽器として遊んでみるのはどうでしょう。たとえばkeyboardで、よく知っている音楽のフレーズをひいてみるとか。誰かがメロディーを弾いたら別の人がドラムでリズムを刻んでみるとか、友達と使っても面白いです」と乾先生。ミュージシャンが使うソフトでもあるので、敷居が高く感じますが、“楽器アプリ”だと思えば気楽に始められますね。

「GarageBand」には、ギター、ドラムセット、弦楽器、ベースなど多彩な楽器が用意されています。楽器を習った経験がないという場合は、まずは試しに「Drums」(ドラム)を選んでみましょう。ドラムには、最も大きい「バスドラム」、中心的な音になる「スネアドラム」、「タム」、「シンバル」の4種類、全部で8つの楽器が用意されています。セットの楽器をひとしきりタップして、どんな音が出るかを確認したら、赤丸ボタンを押して録音してみましょう。このとき、一度にあれもこれも叩くのではなく、「バスドラムのみ」とか「バスドラム+スネアドラム」に絞って演奏すると簡単です。まずバスドラムの音が録れたら、こんどはその上に「タム」や「シンバル」といった別の楽器の音を重ねて録音していきます。このように、いろいろな楽器の音を別々に録って重ねていき、1つの曲に仕上げていくのが「GarageBand」の曲作りの流れになります。ピアノやオルガンが弾けるという方は「Keyboard」から始めてもいいかもしれません。

ちょっと難易度の高い弦楽器での曲作りもできます。楽器選択で「Smart Strings」を選び、左上を「Pop」の編成にします。

「右上のスパナのアイコンをタップして設定モードにしてから、キーをDメジャーにしましょう。その状態でゆっくり“D→A→Bm→F♯m→G→D→G→A”の順番でキーをタップしていくと、聞き覚えのあるコード進行になります。このコード進行は『カノン進行』と呼ばれるもの。このコード進行を“Autoplay”の2を選択して同じようにタップしていくと断然曲っぽくなってきます。“Autoplay”の4にするとまた曲の感じが変わって面白いです。第一バイオリン、第二バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの5つの弦楽器が用意されていますが、表示されている楽器をタップするとオフにしたりオンにしたりできます。バイオリンだけで演奏すると、雰囲気が変わります。5つの楽器を組み合わせていくと壮大な曲が作れたりします。」

この“Autoplay”機能を使うと、適当な順番でタップしているだけでもかなりそれらしく聞こえます。同じ要領で、「Smart Guitar」(ギター)や「Smart Keyboard」(ピアノ)も音楽知識なしで演奏することができますので、子供でも多重演奏のかっこいい曲を作ることができます。

「GarageBand」には、ほかにもおもしろい機能が搭載されています。楽器選択の画面で「Sampler」(サンプラー)を選ぶと、身の回りの音を録音して、演奏することができます。手を叩く音や猫の泣き声でピアノの音が出せるのです。

今回、私も小学6年生の娘とはじめて曲づくりにチャレンジしてみたのですが、思いのほか会話が弾みました。親子で試行錯誤しながら曲作りをする体験ってなかなかないですよね。こんな小さな体験から、音楽の才能を開花させる子が出てくるのかもしれません。「わが家には楽器もなければ、弾ける人間もいない」という方、ぜひ一度、「GarageBand」を使った曲作りを親子で体験してみてはいかがでしょうか。

【紹介者プロフィール】

乾 武司 先生(近畿大学附属高等学校)

高校、塾、予備校等の講師を経験後、平成14年より理科専任教員として近畿大学附属高等学校に勤務。電算室主任として校務システムの構築や教科「情報」の設置に携わる。学内情報のデータベース化・ペーパーレス化とともに、 lCT教育環境のアウトラインデザインに取り組む。学校生活の中でiPadをどう活用すると楽しいのかを試行錯誤中。

【筆者プロフィール】

小池  幸司 (教育ICTコンサルタント / 学習塾 俊英館)

2011年3月、他の学習塾に先駆けてiPad導入を実現。教育現場におけるICTの導入・活用を推進すべく、講演や執筆活動を通じて自社のiPad導入事例やノウハウを発信。2013年3月にはiPad×教育をテーマにした初の実践的書籍「iPad教育活用 7つの秘訣」をプロデュース。iTeachers発起人。

タブレットや電子黒板といったICT機器をうまく活用することで、学校をはじめとする教育機関でも“新しい学び”が広まりつつあります。iTeachers TVはそんな教育現場のいまをお届けする教育ICT情報番組。先生や生徒、教育関係者をゲストに招き、その実践や取り組みをプレゼンテーション形式でご紹介します。番組は毎週水曜日の夜にYouTubeで配信。ぜひチャンネル登録をしてご覧ください。