小山薫堂の一食入魂 [103]

年末恒例。2009年「最も印象に残った5皿」を発表!

 
 

人生の食卓を無駄にしたくないと願う男の食の軌跡



男は、2009年一年の“一食入魂”を振り返って、
最も印象に残ったベスト5を選んだ。
そして、一発勝負の料理より、日常使いの店、
あるいは地方の味を選んでいる自分に気づくのであった。

 
 

題字 小山薫堂

 
 

──今回は一食入魂スペシャル、年末恒例の「最も印象に残った5皿」です。2009年はどんな料理が印象に残っていますか?

「ハーデンタイテン」の生ハイボール

薫堂 今年を振り返ってみると、気合を入れて行く“一発勝負店”よりも、日常に食べに行きたいような“普段使い店”が印象に残ったような気がします。世の中全体がそういう傾向にあるのかもしれませんが、僕も日常的に楽しめる、疲れない店や料理に向かっていたような気がします。
 その中で、最近ハイボールがマイブームになっているんです。「一食入魂」でも何度か触れましたが、今年もさまざまな店でハイボールを飲みました。特に印象に残っているのは青山の中国料理「ハーデンタイテン」の“生ハイボール”。

 この店は、実は学生時代に入り浸っていた店なんです。遊び仲間たちの溜まり場になっていて、ここで賄いを食べさせてもらったり、軽く飲んでから六本木に遊びに行っていました。しばらくご無沙汰していたのですが、今年、たまたま知人に食事に誘われ、連れてこられたのがこの店。それがきっかけで、20年ぶりに当時のオーナーと再会できました。懐かしかったですねぇ。

「イル マンジャーレ」のローマ風レタスのスパゲッティー

 そこで飲んだのがハイボール、しかも樽から注ぐ“生ハイボール”なんです。爽快感があって旨いんですよ。チャーシューなんかをつまみながらこれを飲んでいたら、学生時代を思い出しました。

──薫堂さんにとってストーリーのある店なんですね。

薫堂 店や料理人のストーリーを感じる店っていいですよね。たとえば、今年よく通った麻布十番のイタリアン「イル マンジャーレ」も鵜野シェフの料理人としての人生を感じます。いくつかの店で腕を振るってきたシェフが初めての自分の店で、生き生きとした表情で料理をつくっている。カウンターで、そんな姿を見ながら食べる“ローマ風レタスのスパゲッティー”は今年の5皿の一つです。

──今年は「一食入魂」で地方の店や料理人、食材を紹介することも多かったですね。

「れすとらん門」のレモンステーキ

薫堂 全国各地にはまだまだおいしいものがたくさんあります。今年も仕事でいろいろなところに行きましたが、感動や発見が多かったですね。今年は念願叶って佐世保のレモンステーキを食べることができました。レモンステーキは東京で食べたことがあるのですが、いつか本場で食べたいと思っていたんです。

 レモンステーキは鉄板で焼かれた薄切りの牛肉をレモンソースで食べる料理なのですが、その発祥といわれる「れすとらん門」に行ったんです。鉄板には肉しかのっていない潔さで、レモンソースが絶妙で旨いんです。しかも、鉄板にご飯を入れて食べるのが正式なお作法。おいしいし、面白かった。

「余志屋」の鴨まんじゅう

──京都に最近よく行かれる店があるそうですが。

薫堂 そうなんです。最近京都に行くといつも寄るのが「余志屋」。先斗町の路地裏にひっそり佇む、カウンター中心の店なんですが、季節の一品料理が数十種類あって、どれもやさしくておいしい。なかでも“鴨まんじゅう”は身も心も温まっていいですね。京都は本当においしいものをさりげなく出す店が点在しているのが凄い。

──東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科長として、山形にも通うようになりましたが……。

薫堂 山形は詳しいですよ! 月に数回は行っていますから。「一食入魂」でも書いたイタリアンの「アル・ケッチァーノ」や焼肉の「楓庵」など、何度も行っている店があります。でも、今年最も多く食べたのは駅弁の“牛肉どまん中”でしょう。牛肉煮と牛肉そぼろが、ご飯が見えないくらいたっぷりのった米沢名物の牛肉弁当。妙に食べたくなるんですよね、肉好きの僕としては。新幹線で山形から帰ってくるときは、いつもこれを買って食べます。事務所のスタッフにお土産として持ち帰ることもあります。

米沢名物牛肉弁当“牛肉どまん中”

 こうして振り返ってみると、もっとインパクトの強い料理を食べているのですが、結局は日常で楽しみたいような、疲れない料理が印象に残っていますね。
 それから、地方に目が向いていたことを改めて感じます。自給率アップが叫ばれていますが、本当に日本にはまだまだおいしいものがたくさんあるのだから、数字はともかく、もっと全国各地の旨い食材や料理、さらには料理人に目を向けてほしい、と思います。僕自身、これからは今まで以上に地方で“一食入魂”しそうな気がします。

 
 

店データ

 
 

「ハーデンタイテン」の生ハイボール

中国料理の店ではあるが、酒も充実。生ハイボールは800円、自家製チャーシュー700円。
●東京都港区南青山1-15-3 ペガサスビル2階
TEL.O3-3479-8606
営/11:30~14:30(L.O.)、18:00~翌2:00(L.O.) 休/日曜 ※土曜は貸し切りパーティがない場合に夜のみ営業。

 

「イル マンジャーレ」のローマ風レタスのスパゲッティー

正式名称は“フルーツトマト パンチェッタ レタスのスパゲッティー二 ローマ風”1800円。夜のみのメニュー。鵜野シェフの思い出の味を再現した一皿。
●東京都港区麻布十番1-9-2 ユニマット麻布十番ビル6階
TEL.03-6459-1577
営/12:00~14:00(L.O.)、18:00~22:00(L.O.) 休/無休

 

「れすとらん門」のレモンステーキ

佐世保は外国人に人気のステーキ店が多いが、日本人向けに薄切りにし、さっぱりとレモンソースをかけるようにしたという。元祖サーロインのレモンステーキ。ランチセット2835円、ディナーコース4095円。
●長崎県佐世保市本島町3-9 石飛ビル2階
TEL.0956-23-5117
営/11:30~13:30(L.O.)、17:00~21:00(L.O.) 休/無休

 

「余志屋」の鴨まんじゅう

お造り、焼き魚、煮物、揚げ物など幅広い料理が揃う。長芋とじゃがいもを合わせた生地で鴨肉のそぼろを包み、あられを衣にして揚げた鴨まんじゅう900円。
●京都府京都市中京区先斗町三条下ル8番ロージ
TEL.075-221-5115
営/17:00~22:30(L.O.) 休/月曜

 

米沢名物牛肉弁当“牛肉どまん中”

特製のタレがかかり、しっかり味が入った牛肉煮と牛肉そぼろが、山形県産米“どまんなか”のご飯に合う。11OO円。山形新幹線米沢駅のほか、山形新幹線の車内販売、上野駅、東京駅などでも購入できる。
●「新杵屋」山形県米沢市東3-1-l TEL.0238-22-1311

 
 

 

小山薫堂さんのオフィシャルサイト「N35」はこちら!▼
 http://www.n35.co.jp

 
 
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