小山薫堂の一食入魂 [88]

仲間が一致団結してバランスを取りながら
絶品ホルモンを頬張るイカダBBQは最高!

 
 

人生の食卓を無駄にしたくないと願う男の食の軌跡



男は、イカダの上でBBQをしながら十勝川を下るという
豪快かつ雄大な遊びを楽しみ、その翌日に
スイートコーン生産日本一の町でコーン炒飯を食べながら、
地方の活性化を考えたのであった。

 
 

文・撮影 小山薫堂

題字・横川正紀

 
 

×月××日

車のタイヤチューブを40本ほど並べ、ベニヤ板を張ったイカダの上でホルモンを焼くのだ。

 帯広で開かれた十勝川イカダ下り大会に参加する。と言っても、丸太を縄で縛った本格的なイカダで激流を下るわけではない。車のチューブを40本ほど並べ、その上にベニヤ板を張ったインスタントイカダ。しかもそのイカダの上でBBQをしながら雄大な十勝川を下るのである。“屋形船で天ぷら”があるのだから“イカダでBBQ”があってもいいじゃないか……と、そんな気分でやってみたところ、いやぁ、こんなに楽しい食はない。

 このイカダ下り大会を三十数年前に発案した平林英明さんの店「ランチョ・エルパソ」で食材を調達。炭火で焼いた熱々のソーセージやホルモンを頬張り、キンキンに冷やした缶ビールを飲みながら、のんびりと川を下る。これぞまさに、心の三ツ星料理である。特に、平林さんが屋外飼育した放牧豚の味付けホルモンが絶品。臭みが全く無い上、ピリ辛の味付けが完璧。これで一袋(140g )450円とは信じがたい(取り寄せもできるので、ホームパーティーに最適です!)。

雄大な景色とイカダの爽快感。こんなに楽しくて美味しいBBQは初めて! 来年も来よう!

 ただし、「うまい、うまい」と喜んでばかりもいられない。時には流れが急なところもあるわけで、そういう時は仲間が一致団結してBBQ台を手で押さえ、自分たちの肉を守るわけで……そんな環境も手伝ってか、いまだかつてない美味しさと楽しさを味わい、そして満腹になった。やはり食は、そのものの味以上に、誰と、どういう風に食べるかが重要なのだ。帯広の夏がそれを改めて教えてくれた。
 たぶん、どんな予定さえもすっ飛ばして、来年も参加するだろう。

 

×月××日

  イカダ下りの翌日、芽室という帯広の隣町で「コーン炒飯」と書かれたのぼりを見つける。町のあちこちにあるので気になって調べたところ、それはスイートコーン生産日本一の芽室で開発された新ご当地料理であった。これは食べずにはいられない。
 コーン炒飯専用のパンフレットを頼りに「野の花」という居酒屋に入ってみる。するとここが大当たり。何てことはない家庭料理ばかりだが、どれも安くてきちんとうまい。

地元の特産品を使った芽室のご当地料理、コーン炒飯。将来、全国に知られる名物になるかも。

 締めくくりは、もちろんコーン炒飯。その名の通り、コーンが大量に載った炒飯が運ばれてきた。たかが炒飯、されど炒飯。実はこれには、様々な基準が定められている。例えば、使用するのは当然ながら芽室産のスイートコーンでなければいけない。そしてクノールが芽室のためにわざわざ開発した特製のコーンバターで味付けし、コーンの黄色を強調するべく卵は必ず2個以上使うこと。さらにスイートコーンはバター醤油で味付けしてから後載せにして、白の丸皿に盛りつけ、価格は税込みで980円以下!……などコーン炒飯と名乗るためには10のルールをクリアしなければいけないのだ。
 さて気になる味は……はい、コーンの入った炒飯です。7月17日にデビューしたばかりなので、まだ多少の突っ込みどころはあるが、改良を加えていけば全国区の知名度になる可能性はあると思った。
 しかし、大切なのは、こういうことに地元がチャレンジするということ。日本全国でこういう試みが広がれば、地方はもっと元気になり、そして日本の食の自給率はもう少し上がるのではないだろうか?

 

×月××日

「HOUSE」のココット料理は身も心もホッとする味だ。写真は絶品のロールキャベツ。

 ディーン・アンド・デルーカの若き総帥、横川正紀さんと夕食を共にする。横川さんが招待してくれたのは、西麻布にオープンした「HOUSE」というレストラン。実はここ、彼自身がオーナーでもあるココット料理の専門店なのである。料理店がどんどん進化し、うま過ぎて疲れる店が多くなってきた昨今、彼が目指したのは「ホッとできるうまさ」の店。それで店名が「HOUSE」、料理がココットを使った田舎料理というわけだ。

ロールキャベツは、鍋に残ったスープでリゾットをつくってくれる。これがまたウマイ!

 熱々のココット料理の専門店を、あえて真夏に開くとはいい度胸だと思ったが、連日満席の模様。まさに僕もこういう店を待っていた。インテリアのセンスが良すぎる店は、概して味のセンスが追いついていないものだが、ここは例外。かっこ良くてうまい。
 メニューを開けば、目移りしてしまうくらい、魅力的な料理が並んでいる。前菜は“7種類の旬野菜のロースト”と“スカルモツァチーズと水茄子のオーブン焼き”、メインは“熊本産・走る豚のロールキャベツ”を注文。いずれもフランスの老舗メーカー、STAUB(ストウブ)社のココットで調理されている(ちなみにこの店で一番大変なスタッフは、皿洗いのアルバイトさんらしいです)。

デザートのスフレも熱々のココットで。ここにバニラアイスを入れて食べるのだ。

 余計な手を加えず、食材本来のうま味を引き出したような料理は、どれも絶妙の塩加減で素晴らしい。特にロールキャベツは今年のベスト5に加えてもいいくらい、気に入った。何がいいって、鍋に残ったスープをリゾットにしてくれるのである。河豚(ふぐ)鍋のあとの雑炊をも凌ぐうまさだと思った。
 そうそう、ココットで作ったデザートのスフレも絶対オーダーすべき一品。
 深夜1時までの営業時間も嬉しい。う~、思い出しただけで、またすぐにでも行きたくなる店は久しぶりです。

 

×月××日

 白金の「シェ・トモ」でフランス人デザイナーのG氏を囲んでの会食。東京在住18年のG氏は、自宅ではもっぱら和食らしい。
「フランス料理は胃にもたれるから、あんまり食べないけど、今日は久しぶりだからウレシイね」

「シェ・トモ」の“有機野菜 28~30種の盛り合わせ”。すべて異なる調理法の野菜が並ぶ。

 しかもこの店の料理は、野菜を多用し、バターも少なめだから和食の好きなフランス人にはピッタリだ。市川知志シェフのスペシャリテ“ウニの貴婦人風”は相変わらず完璧。“季節の有機野菜 28~30種の盛り合わせ”という料理には驚かされた。全て違う調理法で仕上げられた30種類の野菜が、一つの皿の上に美しく並んでいる。こういう料理が5品続き、さらにデザート、コーヒーまでついた夜のコースで5780円。「フランス、完全に負けてます」というG氏の一言が嬉しかった。

 
 

 

小山薫堂さんのオフィシャルサイト「N35」はこちら!▼
 http://www.n35.co.jp

 
 

「HOUSE」

   東京都港区西麻布2-24-7 Nishiazabu Show Case 4階
   TEL.03-6418ー1595

「シェ・トモ」

   東京都港区白金5-15-5
   TEL.03-5789-7731
   www.chez-tomo.com

 

 
 
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