dancyu編集部&セブン-イレブンの期間限定コラボカレーができるまで
文・斉藤由利子
撮影・岡山寛司
イラスト・時川真一
 
 

 今年の新作コラボカレー「特製 粗デミソース仕立て 新・欧風ビーフカレー」の名前にある、粗デミソース。今回のカレーづくりはそのソースの本質に迫るところからスタートした。
 セブン-イレブンが粗デミソースと出合ったのは、かれこれ7~8年前。以来、ハンバーグ、ハヤシライス、シチューなど本格的な洋食メニューのハイグレードな味づくりに欠かせないという。「ただ、味を確かめただけでは、このソースの本当のすばらしさは伝わらない」と語る井阪隆一常務の案内で、dancyu取材班はソース工場を訪ねることになった。

 ソースをつくっているキスコフーズの工場は、静岡市清水区の山奥にある。出迎えてくれたのは、「料理は風味だ!」を体現するキスコフーズ代表取締役社長の凉野友康(すずしのともやす)さん。料理の旨味となるソースやブイヨンを手がける同社では、自然の材料でつくってこそ風味は生まれる、という考え方を全レシピに貫いている。

 さっそくソースづくりを見学。粗デミソースは3tもの巨大な寸胴鍋で仕込む。圧力鍋ではなく、ごく普通の鍋と同じ開放式だ。そこにオーブンでローストした鶏ガラ、牛骨と牛すじ肉、1時間半をかけて炒め上げたミルポワ(玉ねぎ、にんじん、セロリ)、トマトペースト、ローリエを投入して煮る。翌日、素材をすべて取り出し、もう一度新たに素材を投入して再び煮込む。3日目は仕上げに。搾汁後、メッシュの異なる漉し器に二度通すと、なめらかな粗デミソースの完成だ。
 大きな寸胴鍋、形状は異なるもののシノワの原理を応用した大型の漉し器、最後は人の五感で判断するソースづくり。スケールや扱う量が大きいだけで、そこではレストランの厨房と寸分違わぬ作業が繰り広げられているのである。
「さらにすばらしいことに、これらのソースはマイナス 45℃の急速冷凍にかけられます。冷凍ですから無添加でつくれる上に、加熱殺菌も不要。再現性が高く、ソースの風味が断然違います」と語るのはセブン-イレブン・ジャパン商品本部のFF・デイリー部シニアマーチャンダイザーの山口繁さんだ。キスコフーズの納品先が一流ホテルや本格フレンチというのも納得である。

 ところで、粗デミソースだが、実は古い厨房用語で、現在では「デミベース」と呼ばれることが多い。オーセンティックなフレンチや洋食店に欠かせない完成一歩手前のソースベースで、ワインなどを足してさらに煮詰め、デミグラスソースに仕上げるという。
 その粗デミソースを前に「今、カレーにはフォン・ド・ボーを使うことが多いです。でも、粗デミソースのほうが日本人の舌になじみやすいものがつくれます」とは、セブン-イレブンの弁当メーカー、わらべや日洋のコラボカレー開発担当者、首都圏事業本部 米飯開発部 米飯課主任の中村忠寛さん。セブン‐イレブンが一流料理人を招いて月に2回開催している、メーカーの開発担当者のための料理家研修会でも勉強を重ねてきた心強い存在だ。

 数日後、コラボカレーが生まれる現場、わらべや日洋東京工場を訪ねた。同時に最終試食会も開かれることに。
 最新鋭の工場を案内していただく。そこでは、頭をガツンとやられるような光景が繰り広げられていた。大鍋と向き合って調理している人、炊きたてご飯をしゃもじでほぐす人、量りながら弁当箱に詰める人などなど。モノを運ぶラインは自動だが、調理は手づくり、つまりおいしさに関わる部分は手作業なのである。

 今回のコラボカレーをつくるのは、もちろん鍋。満遍なく柔らかく火を通すために開放式の蒸気釜を使用し、一鍋で約750食分を仕込む。
 玉ねぎを炒めること約1時間。完全に飴色になったところへ、にんにく、トマトペースト、にんじんのすりおろし、カレー粉などを加えて炒め合わせ、水でのばす。そこに粗デミソースを投入。同時に、隣の鍋で炒めて赤ワインで風味づけした牛肉を加え、さらにマッシュルーム、はちみつや焙煎りんごペーストといった隠し味も入れて、1時間20分煮込む。最後に、クローブやオールスパイス、カルダモンなどのスパイスとバターで風味づけをし、10分ほど煮て出来上がりだ。
「このカレーが店頭に並ぶのは約半日後です。お客様が食べられるときに最もおいしくなるよう逆算して仕込んでいますから」と中村主任。なるほど、熟成したおいしさも計算されているのである。

 国民食のカレーだからこそ、自宅で簡単にはつくれない、専門店のように魅惑するおいしさを追求した「特製 粗デミソース仕立て 新・欧風ビーフカレー」。それぞれの専門家がベストを尽くした、どこにもないカレーの傑作である。



アツアツをご飯にかけて食べよう。レストランからテイクアウトしたような、おいしさを堪能できるはずだ。
 
 

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