小山薫堂の「一食入魂」
春のお弁当スペシャル
人生の食卓を無駄にしたくないと願う男の食の軌跡
一食入魂 第83回 ──春のお弁当スペシャル

今回の一食入魂は「春のお弁当スペシャル」。
お出かけ気分が高まる春にふさわしい、おいしくて楽しく、
しかも、ちょっとしたサプライズも盛り込まれたお弁当をご紹介――。

春である。
ぽかぽか陽気に誘われて、お弁当持ってお出かけしたいような気分。というわけかどうかわからないが、「今回の『一食入魂』はお弁当スペシャルにしましょう!」と薫堂さん。そこで、春にふさわしい楽しくておいしいお弁当を紹介してもらうことになった。
とはいえ、そこは「一食入魂」である。おいしくて楽しくて、さらにちょっとしたヒネリやサプライズの“隠し味”も当然ながらあるに違いない。
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| 「パレスホテル デリカテッセン」のお花味・散策弁当3150円。上の段のちらしには車海老、穴子、蒸しアワビ、こはだ、煮イカなど、多彩な具が入っていて豪華。4月30日までの限定販売。 |
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| 「銀座すし栄」の助六弁当、いなり3個、太巻き3個、かんぴょう巻き4個の10個入りで809円。「現存する最古の江戸前寿司」をうたう老舗の助六はしっとりと落ち着いた旨さだ。 |
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| “まごにわやさしい ひざの上の食堂”2008円。牛すき焼きや季節の野菜の胡麻和えなどやさしくておいしい惣菜が盛りだくさん。東武特急スペーシアの一部車両で5月31日までの限定販売。 |
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| 築地場外市場で買ってきたおにぎりや惣菜を勝手に盛り込んだ“スペシャル築地弁当”。おにぎりは「丸豊」、玉子焼きは「玉友」、鳥は「鳥藤」、桜しんじょうは「佃權」。原価は600円くらい。 |
「まずはコレ」
薫堂さんが最初に出してくれたのが、パレスホテルの“お花味・散策弁当”。二段重の豪華なお弁当は実に華やか。
「箱を開けると上の段のちらしと下の段の総菜が観音開きで左右に広がるのがいいですね。ちらしは具が多彩でおいしいし、花見や春のパーティーに最適。それに、このお弁当はとても便利なんですよ。ホテルのお花見弁当ってだいたい予約制ですよね。3日前までに予約しなければいけないとか。でも、これは注文してから20分くらいでつくってもらえるんです。朝起きて、『天気がいいから都心でお花見でもしようかな』なんて思い立ったときでも大丈夫」
なるほど、これは華やかで便利。
お次は“助六寿司”。ご存じ、いなり寿司と海苔巻きの詰め合わせだ。歌舞伎の『助六』に登場する主人公、助六の恋人が揚巻ということから、「お揚げ」と「巻き物」の詰め合わせを「助六」と呼ぶようになった……という蘊蓄(うんちく)はともかく、お花見弁当からいきなり地味になりましたが……。
「助六はお花見、というよりちょっとした散歩に持っていきたいですね。箸もいらないし、ちょっと手でつまめるのがいいでしょ。気軽なお土産にもいいし。それに、この助六は現存する最古の江戸前寿司とうたっている『銀座 すし栄』のもの。地味だけど旨い。僕は海外に行くときはいなり寿司を飛行機の中で食べるんだけど、次からはこれを持っていこうかな」
そして、次に薫堂さんがちょっと照れながら出したのが“まごにわやさしい ひざの上の食堂”。
「これは、実は僕と料理評論家の山本益博さん、アナウンサーの中井美穂さん、アートディレクターの細山田光宣さんで結成した『お弁当委員会』が考えたものなんです。東武鉄道の特急スペーシアの車内限定販売ですけど」
可愛い袋に入ったお弁当にはやさしくておいしい惣菜の数々が並んでいる。元来、日本にはバランスのよいメニューを表す「ま(豆)ご(胡麻)わ(わかめ)や(野菜)さ(魚)し(椎茸)い(芋)」という言葉があるが、これに「に(肉)」を加えて今の理想の食事にしたのだとか。
「昔は電車で時間をかけて旅行したでしょ。車窓を開けて駅弁を買ったり、食堂車で揺られながら食事をしたり。今はそんな旅情が薄れてしまっていますよね。そんな気分を思い出してほしくて、電車を移動だけのツールにしたくなくて、さらにおいしさと健康を両立させたくてこのお弁当をつくったんです。しかも、これは日光に行くためだけにつくったものなのです」
だから、日光特産の食材が入っていたり、パッケージなどに三猿(見猿、言わ猿、聞か猿)がついているのですね。しかも、5個に一個の割合で「ぱっきん箸」が付いている。箸を割ると金箔がパッと出て来るおめでた箸。「日光東照宮の修復を手がける老舗の金箔屋『金座GINZA』のものなんです」
そして、最後はスペシャルな“築地弁当”。
「築地の場外っていろいろな惣菜やおにぎりなどを売っているじゃないですか。あこれこれ好きな物を買って詰め合わせたらおいしくて楽しいお弁当ができますよね」
で、この日用意されたのは、「丸豊」のおにぎり、「玉友商店」の玉子焼き、「鳥藤」の鳥皮餃子ともも肉ロール、「佃權」の桜しんじょう。これをずらりと並べて薫堂さんがお弁当づくりを始めた。
「えーと、おにぎりは鮭とイクラの親子と、アサリが入った深川にしよう。玉子焼きはこっちかな……」とデザインを考えながら配置。これらを包む竹の皮や彩りのパセリももちろん築地で売っているもの。
「自分好みのお弁当がつくれるから楽しいですよ。花見のためにお弁当を用意する、というよりお弁当つくったから花見でも行こうか、というものですね、これは。プチ創作感、プロデュースする喜びがある……。ん、プロデュース!?」
ここで、薫堂さん、何か閃いたようだ。
「そうだ! 本当に春のお弁当をプロデュースしましょう。また『司亭』にお願いしよう」
「司亭」といえば、時折「一食入魂」にも登場する薫堂さんの事務所の近くにあるお弁当屋さん。これまでに、薫堂さんの事務所の名前を冠した“N35弁当”(三段ご飯と五つのおかず入り)をはじめ、第4弾の“満腹警察24時”(カレー丼弁当)まで、薫堂さんが勝手に(?)お弁当を考え、それを商品化してきた実績がある。

「今回はその名もズバリ『dancyu meets 司亭! 春の一食入魂弁当』。春らしく、しかもボリュームがあっておいしいのがいいですね」
と、おもむろに紙と色鉛筆を取り出して設計図(?)を描き始めた。
「えーと。ロールキャベツと玉ねぎステーキをドーンと入れて、ご飯は鮭と玉子焼きをまぶしたやつがいいな……。そうだ、おかずの一つはサプライズにしましょう。何が入るかは当日のお楽しみ、っていうのもいいでしょ?」
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| 薫堂さんが設計図を描き、「司亭」に実現してもらった“dancyu meets 司亭! 春の一食入魂弁当”880円。ロールキャベツや玉ねぎステーキ、竹の子の挟み揚げなどが入り、ボリューム満点! さらに日替わりのサプライズ惣菜もお楽しみ! 4月7日~4月30日、一日5食の限定販売。 |
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なんだか、とっても楽しそう。そして、出来上がった設計図を持ってさっそく「司亭」へ。
「すみません。また急なお願いで申し訳ありませんが、お弁当つくっていただけませんか?」
「いつも急なお願いだもんね、薫堂さんは」と笑う「司亭」のおばちゃん。おじちゃんは、設計図をちらりと見ると、「こんなんでいいかい」とすぐにサンプルをつくってくれた。
「おお、素晴らしい! 完璧ですね。これでお願いします」
というわけで、薫堂さんプロデュースのスペシャルな“春の一食入魂弁当”が完成。実際にお店で出してもらうことになった(4月7日~4月30日まで、一日5食限定販売)。
「おいしくて楽しいお弁当を探したり、伝統と歴史ある弁当に感動したり、あるいは自分でプロデュースする喜びもある。すごく身近な存在だけど、お弁当の楽しみは幅が広くて、なおかつ奥が深いものですね」
と、弁当の素晴らしさに改めて感動する薫堂さんなのでありました。
| スペシャル築地弁当 「丸豊」 東京都中央区築地4-9-9 TEL.03-3541-6010 「玉友商店」 東京都中央区築地4-16-2 TEL.03-3541-3181 「鳥藤」 東京都中央区築地4-10-18 TEL.03-3541-2545 「佃權 市場橋工房店」 東京都中央区築地4-9-11 TEL.03-3546-6871 |
お花味・散策弁当 「パレスホテル」 東京都千代田区丸の内1-1-1 TEL.03-3211-5211(代) |
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| 助六寿司 「銀座 すし栄 本店」 東京都中央区銀座7-13-2 TEL.03-3541-5055 |
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ひざの上の食堂 |
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| 春の一食入魂弁当 「司亭」 東京都港区東麻布1-3-7 TEL.03-3585-3518 |
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