小山薫堂の一食入魂 [76]

人気シェフの料理が楽しめる「クーカル」は
夏の軽井沢に幻の如く出現する
ドリームレストランだ

 
 
人生の食卓を無駄にしたくないと願う男の食の軌跡
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男は、軽井沢で開催中の“食の学園祭”で
人気シェフたちの名物料理を食べまくり、
ニューヨークのヘルシーレストランで
客を楽しませる“ローフード”料理に感心したのであった。
 
 
小山薫堂 = 文・写真サーマ・メルガイリッス = 題字
 
 

×月××日

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「クーカル」は人気シェフの名物料理をチョイスできる。写真はタパス盛り合わせと餃子。

 軽井沢に夏限定(9月24日まで)で出現中のフードコート「クーカル」に行く。これは言うなれば、人気料理人が集う食の学園祭である。ここに来れば、イタリアン、フレンチから焼き鳥、ラーメンまで、日本全国の有名店の名物料理を同じ食卓に並べることができるのである。今年で2回目となるが、去年よりはるかに魅力的な空間になっていた。

 食べたいものがありすぎてメニューを決めるのが難しい。う〜ん、どう攻めるべきか。カヴァを片手に、恵比寿「ティオ・ダンジョウ」のスペインタパス盛り合わせをつまみつつ、じっくりと作戦を練った。よし、今日はこれで行こう!と決めたメニューは……

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日替わりの“シェフズテーブル”も人気。この日は「パッソ・ア・パッソ」の有馬シェフが登場。

 前菜に白金「シェ・トモ」の生ウニの貴婦人風と代官山「カノビアーノ」のサラダ、それに福岡「筑豊ラーメン 山小屋」の餃子もつまもう。スープは西麻布「クローチェ・エ・デリツィア」のモツァレラ入りガスパチョ。パスタは京都「イル・ギオットーネ」の江戸前穴子のスパゲッティと門前仲町「パッソ・ア・パッソ」の長野産そば粉のフジッリ。

メインには新宿「タベルナ・ロッサーナ」の天使のエビ生ハム巻きソテーをいただき、最後は三重「東洋軒」のブラックカレーでしめる……うぅ、夢のようなラインナップ。ここはまさに、夏の軽井沢に幻の如く出現するドリームレストランなのである。次回は果たしてどんな料理人が登場するのか、早くも来年の展開が気になっている。

×月××日

 ニューヨークの話題料理店「ピュアフード・アンド・ワイン」で、ローフードを初体験する。ローフードのローはRAW、つまり生を意味する。48℃以下で調理することによって、食物に含まれる酵素やビタミンを破壊することなく体に取りこめるらしい。

 こういう体にいい料理はストイック過ぎてついつい敬遠してしまう……という先入観は、「ピュアフード・アンド・ワイン」で見事に打ち砕かれてしまった。

 まず、店に入った途端、活気あるノイズに圧倒される。あちこちのテーブルから笑い声が聞こえ、オシャレな客たちが有機ワインを飲みながら楽しそうに食事をしている。その光景は「体にいい」という以前に「楽しそう」なのだ。

 そして運ばれてきた料理を食べて、納得! 客たちの笑顔の理由が分かった。花ズッキー二のサラダ、ピーカンナッツのペーストを忍ばせた椎茸とトリュフのタルト、熱を入れずに作った松の実のラビオリやラザニアなど、ローフードとあえて意識する必要もないくらい、どれも普通にうまいのだ。さらに驚いたのが、デザートの素晴らしさ。絶品のティラミスが、砂糖や卵、乳製品を一切使っていないとは信じがたい。ココナッツやアーモンドの粉を上手に利用したそのレシピに大拍手である。

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ニューヨークで人気のローフードレストラン「ピュアフード・アンド・ワイン」は、楽しくて活気のある店だった。左は題字を書いていただいたオーナーシェフのサーマさん、右上はティラミス、右下は花ズッキー二のサラダ。

 オーナーシェフのサーマさんは、モデルと見間違うほどの美女! 投資顧問の仕事で財を築いた彼女は、人々を楽しませたくてこの店を作ったのだという。

「まず楽しい気分になることが一番! その上で、体にいい食事が出来たら最高でしょ」

 厨房をのぞかせてもらったら、普通のレストランのとはどこか違う。当然ながら、コンロが見当たらないのである。

 ミシュランの三ツ星シェフもいいが、こういう料理人こそ、日本に上陸して欲しいと思う。

×月××日

 ここ10年ほど、ラジオの仕事で週に一度、横浜に通っている。最近、新しい店を見つけて、横浜に行く楽しみが増えた。店の名を「横濱鍋 友楽(ゆうらく)」という。店名にも使われているこの横濱鍋が抜群にうまい。山のように飛び出した鍋の中央部分で豚肉を焼き、周囲に溜まっているスープで野菜を煮る。焼肉であり、しゃぶしゃぶでもあり……つまり、最近、流行りだしている焼鍋の一種なのだが、友楽のとんこつスープと辛味薬膳スープは病み付きになる味だ。

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「友楽」の横濱鍋。焼肉としゃぶしゃぶの要素を両方味わえて、旨い。この冬、流行間違いなし!

 ゴマ油につけた豚肉を、熱々の鉄板の上に乗せるとジュッと音がする。そこに熱々のスープをかけて豚肉に熱を入れる。スープの味が肉に沁みたところで、生卵につけて頬張ると……あぁ、思い出しただけで生唾が出てくる。こうして食べる豚肉の何と甘いこと!

 最後に、余ったスープにラーメンを入れる。これがまた、たまらなくうまい。これだけでラーメン店を開けそうだ。

 この冬、新しい鍋として、横濱鍋が流行りそうな予感がする。

×月××日

 楽天で購入したバーベキューセットが到着。早速、火入れ式を行う。選びに選び抜いて今回手に入れたのは「ezBBQ」という器具。こだわりのバーベキューと言えばつい炭を連想しがちだが、これはプロパンガス式である。今年の初夏、カナダに行った際、彼らの大半はガス式のものを使っていた。確かに炭で焼くとうまいが、火加減の調整が難しい上、焼き手の行動がどうしても制限されてしまう。しかしガス式なら、食材によって微妙な火加減にもできるし、一旦火を止めて休むこともできる。さらにフード付きのものなら、ガスオーブン的な使い方ができて、調理方法も広がるのである。そんなわけで、カナダで本場のバーベキューを体験して以来、どうしてもガス式のものが欲しかった。

 旬の野菜や魚介類、分厚いステーキ肉など、あらゆるものを焼いてみたが、意外にも一番のヒットはホットドッグ。北海道・帯広の「ランチョ・エルパソ」から取り寄せた粗挽きウインナーをじっくりと焼き、グリル面の空いたところでパンを焼く。一緒にはさむのは、キャベツの酢漬けのみ。マスタードとケチャップをたっぷり塗り、大きな口を開けてガブリッと食べる。まず、表面が香ばしく焼けたパンがたまらなくうまい。口の中で、肉汁たっぷりのウインナーがパチンとはじけ、ケチャップの甘味とキャベツの酸味が絶妙に絡み合う。たった一本のホットドッグに、この上ない喜びを感じるのである。こういうものこそ、贅沢な食事だと思う。聞いたところによれば、バーベキューコンロを使った焼き芋が密かにうまいらしい。秋が待ち遠しくなった。


「クーカル」 軽井沢町軽井沢601-1 チャーチストリート2階 TEL.0267-42-2708
「横濱鍋 友楽」 神奈川県横浜市中区野毛町2-70 TEL.045-262-3101

※「クーカル」の詳細、予約はwww.cucal.net/2007/

 
 

 

小山薫堂さんのオフィシャルサイト「N35」はこちら!▼
 http://www.n35.co.jp

 
 
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