特集/「カレーラーメン」が来た!
インスタント麺の発売は、なんと1961年!
カレーラーメンに歴史あり。
長い雌伏のときを経て、檜舞台へ
一体いつ頃生まれたのだろうか。
実態を探るべく徹底的にそのルーツを調べてみた。
ラーメンとカレー。日本人の国民食を考える上で、この二つは欠かすことのできない定番中の定番だ。この最強のコンビを融合させたパワフルなメニュー、カレーラーメンが今、熱い。とにかく熱いのだ。ここ3〜4年でカレーラーメンをメニューに載せるラーメン店が増え続け、とうとう専門店まで登場する時代が到来した。カレーラーメンなるものは一体、いつ頃からこの世に登場し、市民権を得てきたのだろうか。調査隊を結成して綿密なリサーチを進めることにした。
カレーラーメンのルーツを探る上で、外すことができないのがインスタント麺だ。特に日清食品の「カップヌードル カレー」(1973年発売)の存在は大きい。カレーラーメン、と聞いてこのカップヌードルを思い浮かべる向きも多いのではないだろうか。さらに遡ってみると、1961年には同社の「チキンラーメン プラスカレー」、エースコックの「カレーラーメン」という袋入りのインスタント麺が発売されている。少なくとも、カレーとラーメンを合体させるというコンセプトは、40年以上前からラーメンの中の一つのジャンルとして、確立されていたと言えるだろう。
札幌ラーメンの名店に
旨いカレーラーメンあり
街のカレーラーメンを食べ続けていくうちに、大きく二つの潮流があることに気がついた。一つはカレー粉を使ったオーソドックスなカレーラーメン。もう一つは複雑な風味とスパイシーさをもつユニークなカレーラーメンである。
このうち、首都圏でオーソドックスなカレーラーメンを出す店は、なぜか札幌ラーメンの店が多い。恵比寿の人気店「ら〜めん山田」や、池袋の「はせ川 らぁめん」などが代表格だ。1968年から池袋に根をおろす「はせ川 らぁめん」の店長・新保雅章さんからは、
「ウチは37年前に札幌のススキノから池袋に移転したんだが、カレーラーメンは先代が東京進出と同時に始めたんだよ」という証言を得ることができた。これら札幌ラーメンの店で、どうして積極的にカレー味が導入されるようになったのだろうか。北海道には味噌、塩、醤油と3種類の味つけをすべて揃えた店が多い。北のラーメン激戦区では、味の多様化に柔軟でないと生き残ることが難しかったのかもしれない。さらに、北海道のカレーラーメンを語る上で、苫小牧の「味の大王」を外すことはできないだろう。詳しくは116ページ(*1)からの北海道ルポに譲るが、そのスタートは1966年とこちらも40年の歴史を誇る。また、同じく雪国の新潟に目を向ければ、背脂を効かせたラーメンの元祖である、燕市の「杭州飯店」でもカレーラーメンを古くからメニューにとり入れていたことが判明した。二代目の店主・徐勝二さんが働き始めた1964年には、すでにカレーラーメンがあったとか。このようにカレーラーメンは、おそらく古くから全国各地に存在していたのではないだろうか。
これに対し、ニューウェーブのカレーラーメンは実にバラエティー豊かである。ラーメンのみならず、つけ麺、油そば、和えそばなど多岐にわたり、各店が自由闊達な発想で新しいスタイルを模索している。これら最新のカレーラーメンを調べるうち、私は一人のキーマンと出会った。「あまからや」(現在休業中)の店主・海老名東人さんである。
1999年、新横浜ラーメン博物館で
「ラーメン登竜門」というイベントが行なわれた。これは、一般から新しい発想のラーメンを募集し、優勝者は博物館に出店できるという大会だった。ラーメン店の経験はなく、カレー専門店の店主として挑戦した海老名さんは、カレー粉を使わず、独自に調合したスパイスで風味を加えた“スパイスラーメン”を引っさげ見事に優勝する。これまで、ラーメン店のカレーラーメンはカレー粉入りラーメンの枠を脱することはできなかったが、海老名さんのラーメンにより、スパイスへ目を向ける店主が現れ始めた。128ページ(*2)に登場する「九州ラーメン 火の国」の店主・大田黒順司さんをはじめ、あまからやのスパイスラーメンを何度も食べて研究を重ねたという店主は非常に多い。現在進行中のカレーラーメンの多様化の原点と言える職人が海老名さんなのだ。
50年間、味を守り続けている
食堂を千葉県小見川町に発見

- 今回の調査で、最も古くからつくられていると判明した「実之和食堂」のカレーラーメン。シンプルながらバランスのとれたカレーのスパイシーさが、トンコツと鶏ガラメインのスープによくなじむ。
こうして、新旧のカレーラーメンの実態を聞き出し、一応の決着を見たと思えた今回の調査だったが、締め切り直前に新しい情報が飛び込んできた。今年、東京の青山と高田馬場に専門店をオープンさせた「かれー麺 実之和(みのわ)」の店主・大久和紀さんの父上が、なんと50年間、千葉県の小見川町でカレーラーメンをつくり続けているらしいのだ。青山の店で大久さんに聞いてみると、確かに1955年の開店当時からカレーラーメンを出してきたという。今でも創業当時そのままのカレーラーメンを食べられると聞いて、さっそく現地へ急行することに……。東京からは車で2時間ほど。成田空港を越え、茨城県との県境にある小さな町の住宅地に「実之和食堂」は静かに佇んでいた。
店内はカウンターのみで7席。和紀さんの父、大久明さんは今でも現役で毎日ラーメンをつくっている。和紀さんの店とはベースとなるスープは異なるが、ルウのレシピは全く同じ。注文を受けてから具のねぎと豚三枚肉をスープで煮るので、その脂と風味がスープに厚みを与えている。濃厚なとろみのあるスープが自家製麺にからみつき、大量に口に入ってくる。実に豊かな旨味とコク、そしてカレーの爽やかさ。わかりやすく、それでいて飽きのこないカレーラーメンの王道と言える味に圧倒される。半世紀の歴史を刻んだカレーラーメンの底力を堪能できる見事な一杯を食べることができた。
今回、調査を進めてみて、新旧入り乱れてカレーラーメンが大きく花開きつつあることを実感することができた。北海道、新潟、千葉など、全国で自然発生的に誕生したカレーラーメンが50年の時を経て進化し、大きな可能性を秘めた料理ジャンルとして現在成立しつつある。「実之和食堂」のようにカレーラーメンを守り続けている店を探して、われわれの調査はまだまだ続くのであった。

- *1:dancyu2005年10月号「スープカレー王国・札幌では、今まさに人気沸騰中!」。
*2:同上「スープのコクが麺にからまる、スパイシーな桃源郷ここにあり」記事中。
おすすめコンテンツ
-
- dancyu
- 黄色と褐色の幸福 徳島「豚バラ生玉子」
- 新ご当地ラーメンの旅









