新装「ジョエル・ロブション」の20皿コースの
感想は「うまい!」ではなく「ヘブン!」だった

 
 
人生の食卓を無駄にしたくないと願う男の食の軌跡
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男は、はちきれそうなタキシードに身をつつんで3時間半の“幸せな闘い”に挑み、
またある時は、スジ肉焼きそばに舌鼓を打った。そして、ダイエットクッキーを購入したのであった。
 
 
小山薫堂 = 文・写真長岡作茂 = 題字
 
 

×月××日

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ロブションの代表作のひとつ、ジュレ・ド・キャビア。文化ともいえる彼の従来の味も、コースの中に組み込まれていた。

 新しく生まれ変わった「ジョエル・ロブション」にて久しぶりのディナー。はちきれそうなタキシードに身を包み、気合いを入れてテーブルについた。何しろメニューは全20皿のデキュスタシオンコースのみ。ディナーで1人3万5000円もするのだから、いつも以上の一食入魂で臨まなければいけない。

 思えば、「タイユバン・ロブション」で最後の食事をしたのは閉店の3日前だった。4カ月余りに及ぶ改装期間を経て、料理がどう変わり、空間がどう変わり、そしてサービスがどう変わったのか?……これほど興味深い“Before After”はない。

 まず、空間のリノベーションに、なるほど! と唸った。これまでの重厚な内装がガラスで覆われている。たったそれだけのことなのだが、空間全体が随分と引き締まって見えるのである。しかもその演出は、ロブションの料理という重要文化財を守りながら、そこに現代の新しさを加えた、とのメッセージが含まれているようにも見える。そして実際、運ばれてきた料理はその通りだった。キャビアと甲殻類のジュレを合わせ、カリフラワーのクリームで仕上げる“ジュレ・ド・キャビア”を筆頭に、これまでロブションが生み出してきた代表作と、現代を意識した最新作がバランスよくラインナップされている。

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目の前で注がれたブイヨンスープをローズマリーでかき混ぜると、トリュフとフォアグラのペーストが溶け出すのであった。

 新作の中では、小さなスープが良かった。まず、ペースト状の何かが底に溜まっている空のカップが運ばれてくる。目の前でそのカップに注がれるのは、トリュフの香りがする鳥のブイヨン。そしてここからがポイント。それを、燻製したローズマリーの束でかき混ぜるのである。すると底に溜まっていたペーストがブイヨンに溶け出す。それはトリュフとフォアグラのペーストだった。トリュフと燻製したローズマリーの香りが出会い、さらにフォアグラの濃厚な旨みが口の中で広がる。「うまい!」ではなく「ヘブン!」という言葉が頭に浮かんだ。

 この調子で20皿も続くのだから、これはもう闘いである。ただし、これほど幸せな闘いはない。ロブションの料理は、発想の面白さだけに溺れていないところがいい。どんなことをしようと、最後は“分かりやすいうまさ”に辿り着く。だからアッという間に3時間半が過ぎて、気持ちよく完食できた。

 ただ1つ、難しいのはワイン選びである。いっそここでは、全てシャンパーニュで通すほうがスマートかもしれない。皿ごとに3口ずつ程度のワインが提供されるようなワインコースが設定されることを望む。

 さて、次はいつ挑もうか? その前に、ロブションディナー用スーツを誂える必要がある。ウエストが2サイズくらい大きめのものを。

×月××日

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「作作」は鉄板焼きやお好み焼きがメインだが、陰の主役はスジ肉。あらゆる料理がスジ肉によって味を引き立てられるのだ。

 友人のインテリアデザイナー、K氏がお好み焼きの店を設計したというので、何となく行ってみる。料理よりも空間に期待して行ったのだが、店内に足を踏み入れた途端、只ならぬオーラを感じた。新しい店なのに、古い。インテリアでそういう演出をしているのではなく、店のどこかに“重心”のようなものを感じるのである。それは、主人の存在だった。名前は長岡作茂、そして店の名を「作作」という。本店は神戸の住吉にあり、地元では知る人ぞ知るこだわりの小さな店として人気らしい。“粉もの”の聖地、神戸から進出してきた主人の自信と誇りがひしひしと伝わってくる。

 お好み焼きをメインにした鉄板焼きのコースで、予算は1人4000円前後。内容を考えれば相当安い。この店の料理で陰の主役を演じているのは、スジ肉であ

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「神戸と同じ味、料理を出していきます」という主人の長岡作茂さん。新品の鉄板に油が馴染む頃が今から楽しみだ。

る。8時間煮込んで作るスジ肉はなかなかの傑作。あらゆる料理の隠し味として使われている。そのスジ肉を使った焼きそばもいい。特に麺が独特である。

 しかし、どうしても本店と同じにできないものが1つだけあった。それは、鉄板である。新品の鉄板にまだ油がなじんでいないぶん、同じ味が出せないと主人は悔しがっていた。

 時間が経つほどに成長していく……それがお好み焼き屋の魅力でもある。

×月××日

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「吉兆」の空弁“高砂穴子すし”。1個2000円ナリ。1日30個限定、すぐに売り切れてしまうという人気商品だ。

 羽田の第二ターミナルに初めて足を運ぶ。飛行機に乗るため、ではなく、ある弁当を食べるために。「空弁」という言葉が生まれたことで、最近何かと空港の弁当に注目が集まっている。今回の狙いは、あの「吉兆」が作る“高砂穴子すし”。1日30個限定、1個2000円もする高級弁当だが早々に完売するというので、お昼前に行った。酢飯の上に明石産の煮穴子がのっていて、別封のきざみのりとあられをかけて食べるのだが、さすがに「吉兆」、うまく作り上げている。

 しかし、僕は思う。せっかく「空弁」と名乗るからには、もっと空港という場所を生かした弁当を作って欲しい。空港で売る弁当が「空弁」ではつまらない。日本中と瞬時につながることができるのだから、その日の朝、函館港に揚がった魚や、沖縄の名人が作った豚肉料理のらふてーが詰まったような、そんな弁当を毎日個数限定で作って欲しいのである。

 羽田空港は、日本の美味しいものが集まる場所。そう、実は最大の市場だったりする。その名物弁当は、決して大きな利益にはならないけれど、航空会社が行う1つのメセナにはなり得ると思う。

×月××日

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順調であったはずの“測るだけダイエット”に挫折しつつある今、思わず購入した「豆乳クッキーダイエット」が頼り!?

 油を断つ、と書いて油断。本来の語源は仏教の経典にあるらしいが、今の自分にとっては、「意思の弱さから、断っていた油ものをついつい口にしてしまい、体重を増やしてしまうこと」に由来しているとしか思えない。

 お正月を過ぎたあたりから大変なのである。順調に進んでいたはずの測るだけダイエット……今では体重計に乗るだけの勇気がない。

 そんな折り、ネットで偶然見つけた「豆乳クッキーダイエット」の文字。その類の広告にはよくありがちな「もう、コレでだめなら全額返金」のコピーにひかれ、ついつい注文してしまった。おからで作ったクッキーのため、食べたあと水分をとると、胃の中で何倍にも膨らんで満腹感を得られる、らしい。一食入魂の精神にやや反していると思いながらも、ついに手を出してしまった。さて、その効果は?

シャトーレストラン
ジョエル・ロブション
東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内 TEL03-5424-1347
神戸住吉 作作 東京都港区南麻布1-5-4 FLEG南麻布地下1階 TEL03-5443-8576
 
 
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