魚嫌いの子が自分でさばいた魚を食べて
「おいしいね!」
6月の日曜日、築地市場内で「子供魚教室」が行われた。場内のキッチンスタジオを使って、小学3年生から中学1年生までを対象にしたこの料理教室も、今回で3回目。飯炊きオバサン役で1回目から参加している私だが、なかなかユニークな教室なのだ。
主催者は、魚商組合の青年部と築地市場内の文化団体銀鱗会。魚商組合は魚屋さんの団体だから、魚さばきはお手のもの。銀鱗会は、水産部の仲卸を中心に構成されているので、教材の魚の調達は朝飯前。というわけで、両者がっちりスクラム組んで、仲卸がとびっきりの旬の魚を仕入れれば、町の魚屋さんたちが先生になって、おろし方や刺し身の造り方を指導。そして、自分でこしらえた魚をたっぷり試食してもらうのだ。
ハイ、もちろん子供たちにも出刃包丁を握ってもらいます。
バンダナで髪をキチッとまとめ、エプロン姿も凛々しく、調理台を囲んだ子供たち。今回のメインメニューはアジやカツオの刺し身である。さすがにカツオはサクを刺し身に造るだけだが、アジに関しては、ツマを添えて盛りつけるまで、丸ごと一匹から挑戦。三枚におろし、腹骨をすき取り、骨抜きで骨を抜いて……。付き添いのパパママ組だって、ふだんやったことのない難易度の高い作業だ。
小さな子供には手に余る出刃包丁、マンツーマンスタイルの指導なので、ついにはあちこちで先生と子供のニ人羽織状態。
「力を入れなくっていいんだよ。ホラ、包丁はスッと引く。ネッ、ホーラ」
それでもアジは刺し身でなく、どう見たってタタキだけど、自分で造ったとなると、盛りつける手つきも違う。まるで宝物を触っているようで微笑ましい。
この教室誕生のきっかけは、一昨年の魚商青年部と銀鱗会合同の会議でのことだった。
「牛や豚の天然モノなんて食ってないのに、魚は養殖があるからイヤだってさ」
「生臭いから嫌いって言うんだよな」
「イワシがヘルシーだって言って、旬でもないヤセのイワシを欲しがって、あげくの果てにうまくない!だろ。まいっちゃうよ」
魚が売れない。「店はオレの代で終わりだ」と廃業を宣言した魚屋さんもまじえ、話題は昨今の魚離れ事情に集中したのだった。魚を商いにしているだけに、一つ一つの言葉が身につまされ、大きなため息が続いた。
この魚離れに対して、なにかできないか。「オレたちは魚屋。できることったら、うまい魚を食べてもらうことだよ。子供がいいよ、子供のうちに手と舌で覚えてもらおうよ」
こうしてまったくのボランティアで教室開催となったのだ。
反応は、毎回、上々である。
魚は大嫌いと言っていた子が、試食タイムには「おいしいね」と、目を輝かす。「うちの子はカツオの匂いがダメで、マヨネーズをかけて食べるのに、今日はお醤油で食べました」とお母さん。なかには子供より張り切ってマイ包丁を携えて参加、魚さばきをみごと習得したお父さんもいる。
そして、根っこにこそ、このままでは生業が危ういという悲壮な魚屋のうめきがあるが、魚屋が開いた教室という現場は、ひたすら「やって楽しい」、それに尽きる。未知の体験に頬を紅潮させた子供たち。うまくできた時、親を見る表情の得意気なこと。逆に、親のほうが子供より包丁使いが下手で、笑われる場面も……。親子でなにかをやる楽しさが、それを一層のものにしているようだ。「食育」などとしかつめらしく語るより、「親子」で台所にたてば、一挙に何かが解決できそうな気がする光景だ。
うまい魚を食べさせたい! その一心で準備をするために、実費はいただくものの教室は毎回赤字。収支決算書に青くなりながらも「次回もいつか」と、思い描くのは、魚食普及だけでなく、もっと大きな何かをスタッフ一同、感じているからかもしれない。
- [今月の魚]

- 新子を前に、お寿司屋さんが呟いた。「また、頭の痛い季節がやってきた」。寿司通が楽しみにしている新子の季節。今年は昨年よりもグンと早く6月末には初入荷したが、盛夏が最盛期。しかし、台風など海の状況でジェットコースターのように値段は上下する。上手に買い物するには、天気予報を睨み、河岸の情報を聞きと、気骨が折れるのだ。今年、もう、新子を食べましたか?
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魚市場の「子供魚教室」は口コミで募集するのみですが、是非ご参加を(次回の開催期日は未定)。
問い合わせは、東京魚商業協同組合 TEL03-3541-7415、築地市場銀鱗会 TEL03-3541-7194










