特集/「焼きそば」繁盛記
一大ブレークした、噂のソース焼きそばの秘密を
探しに富士山の麓へ
富士宮の「焼きそば」は、今日も元気なり

- 富士宮やきそば学会が認定した店には、この幟が燦然とひるがえっている。
秋田・横手、栃木・太田を従えた
3大焼きそばタウンの筆頭なのだとか。
地元のコシのある麺に、これまた地元産の
キャベツ、そして何やら怪しげな"肉カス"の
入ったソース焼きそばの実力を探りに
潜入した「何故ナゼ軍団」がその目で見、
食した味とは……

- 「いざ、富士宮の焼きそばの謎を解き明かしてやろう」と巨大なヘラを両手に意気込む伊丹さん。そのヘラには美しき富士山の姿が(残念ながら、今回は実物にはお会いできず。無念なり)。
富士山の麓、富士宮が熱い。何故か? アッチッチの鉄板で焼きそばを焼いているからだ。熱々の焼きそばをハフハフと食べているからだ。何故富士宮なのか? 何故焼きそばなのか? ここ数年の間に富士宮焼きそばが、燎原の火の如く広まったのは何故か? 我ら「何故ナゼ軍団」、その謎、解明せずにおられるか!
まずは、最もスタンダードな店から攻める。駄菓子屋から始まったという富士宮焼きそばは、小さな店が多いが、「じねん坊」は、広々とした座敷へ上がると、ドーンと10卓のテーブルすべてに鉄板がついている。この店の特徴は、精製していないラードと肉カスを使うこと。「一番よく出るのは、ミックスですね」と女主人の勝呂恵美子さん。試食すると、濃い味付けが多い富士宮焼きそばの中で、サッパリ系のソースが印象に残った。

- 仕上げに欠かせないのが、鰯の削り節と青海苔、紅生姜。「じねん坊」のミックス焼そば600円。豚肉、イカ、海老が入っている。それぞれ単品の具だと、500円となる。麺は叶屋。
次に私が着眼したのは、“あられ”という一品。どんなもんやらなんじゃらほい、と食べてみると、なんとも不思議な口当たり、味わい、食後感。お好み焼き風に小麦粉と野菜を敷いて、ご飯をのせ、更に具を重ね、ひっくり返す。知らないで食べたなら、誰もご飯とは気づかないね。“あられ”という命名は「おそばを入れたのが“しぐれ”だから、ご飯なら“あられ”かな、と(笑)」。何はともあれ、“ファミリー度No.1”のお店と認定する。

- 「小粋」の新メニュー、しろ焼そば750円には、自分でつくったバターを添える。瓶に入った朝霧高原の牛乳を振ること10分余り、脂肪分が固まって“バター”ができる。焼きそばが焼き上がるまでに、ちょっとした理科の実験が楽しめ、子供連れならきっと大騒ぎになるはず。
次に向かったのが、天気さえ良ければ眼前に富士を仰ぐ「小粋」。店名が小粋なら、メニューも小粋。サラダの上にカリカリの焼きそばをのせる“小粋サラダ”を始め、「焼きそばの未来を見つめ、常に新しい物を目指している」という主人・平塚純さんが作る創作焼きそばは、驚きの連続。まずは、富士山の溶岩の上で焼いた“溶岩焼き”。見た目でビックリ、量でドッキリ。お値段は、富士山の標高にちなみ3776円。「富士山が日本一なら、コレは日本一値段の高い焼きそば(笑)」。溶岩で焼かれた麺は、パリパリを通り越してバリバリッ! これをなんとトコロテンと酢醤油のつけ麺にして食べるのである。唖然の一品であった。

- 「こんどう」の人気メニュー、ドライカレーやきそば400円。ソースとカレー粉が相まった刺激的な味が人気の理由。ふつうの焼きそば同様、いか入や肉玉などが選べる。
私が最も感心したのが、新メニューの“しろ焼そば”。朝霧高原の牛乳を瓶に入れて振る。だんだんバターが出来てくる。白い焼きそば麺の上に、そのバターをのせる。サワー・クリームのようなフレッシュな味わい。残った牛乳をつけ麺のタレにして食べる。文句なしの“オリジナル焼きそばNo.1”と断言する。
お次は、開店44年。いかにも“地元!”という語感が似合う「こんどう」に突撃。オリジナルの看板メニューは、ドライカレー焼きそばである。「フッと思いついたのが、25年前。(水の代わりに)ラーメンのスープをかけるのが、うちの特徴かな」とご主人の近藤正明さん。コレといい、しぐれ焼きといい、相当に濃厚な味付けである。色んな店で“しぐれ焼き”の語源を尋ねたが、ここでも「俺も色々調べて、どうも京都から来た言葉らしいけど、ハッキリしねえんだよ」。“地元密着型No.1!”に決定。
最後のお店は「うるおいてい」。「富士宮には200店近い焼きそば屋があるって言うけど、ウチでしか食べられないのが“うるおい焼きそば”」と、いかにもキップの良さそうな店主の高野勝也さん。一日限定20食のみ。「まず麺が違うんだ。見てみな、この色。これが焼きそばの自然の色なんだ」。

- 無着色の地粉の麺を使った「うるおいてい」のうるおいやきそば800円は、一日20食の限定だ。
話を聞いているだけで、有り難さに拝みたくなる(笑)。様々な具を炒め、焼きそばを投入、水をかけると「ビシューン!」と旨そうな香りが飛んでくる。しかも、卵焼入りである。ソースも勿論特製。焼きそばの他に、ビールをグビグビやりながら色んな鉄板焼きを食べた私。「なんでも旨い!」。“何を食べても旨い店No.1“の称号を捧げる。
最後に謝罪。まるで初体験の如く書いてきたが、実は私、何度も富士宮焼きそばを食べておるのだ。

- 店や製麺業者と関係なく“勝手連”のように「富士宮やきそば学会」を立ち上げた、会長の渡辺英彦さん。町おこしの新しい姿として全国から注目をあびている。
最大の特徴は、麺。まるで輪ゴムのよう(失礼!)に歯応えとコシがある。噛み切る時、歯をはじくほどの弾力である。製麺メーカー「叶屋」の後藤寛司専務は「普通の麺は蒸した後、もう一度ボイルしますが、富士宮麺の特徴は、強制的に冷却し、表面を油でコーティングします。だから含有水分が極端に低いんです」。次にラードを搾った後の肉カスをかけること。鰯の削り粉(カス)をかけることが3大特徴であって、おまけに富士山の伏流水という自然の恵み、キャベツの旨さも見逃せない。「焼きそば自体が、昭和27〜28年頃に出来た歴史の浅い食べ物だし、肉カスも鰯カスも、富士宮は“カスの文化”なんです(笑)」
締めに「富士宮やきそば学会」という珍妙な会(?)を作り、一躍富士宮焼きそばを有名にした会長の渡辺英彦さんからのメッセージ。「『富士宮やきそば公式ガイドブック』という本が発売になったので、皆さん、買って下さい」
すっかり富士宮焼きそばのファンとなった私。取り寄せの電話をかけそうだ。
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