オーストラリア●シドニー

アイルランド生まれのシェフが織りなす料理は、
日本人の口にぴったり合う、繊細かつ品のよいフレンチ

 
 
在シドニー
信原彰夫 = 文と写真
 
 

 外国に住む者の常として、日本にいる友人やその知人たちが突然来豪し、シドニー中心部のホテルから電話で、オーストラリアならではのおいしい食事を近場で食べたいがどこがいいか、と聞かれることが多い。そのときにとっさに頭に浮かぶのが「バンク」である。

 市内どのホテルからも歩いて行かれ、たとえ、少し離れていてもタクシーなどに乗らずに、シティーサークルの電車を使い、マーティン・プレース駅で降りれば、そこから1分、と極めて便利な立地条件にある。

 もともとは、1世紀も前に建てられたという銀行の建物の一角。それだけに、レストラン内は天井が高く、ユーカリの林を思わせるモスグリーンの太い大理石の4本の円柱と、白いマーブルフロアに大きな窓。静かに、ゆったりとした気分で食事がとれる、まれに見る贅沢な空間だ。このバンクでは、オーストラリアで十指に入るシェフのリアム・トムリンが腕を振るう、実に繊細かつ上品で日本人の口に合うモダン・フレンチが、ほどほどの料金で食べられる。

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 リアムはアイルランド生まれ。14歳のときからヨーロッパの超一流キッチンで腕を磨き続けてきた。1991年にオーストラリアに移住後、シェフとして数々の賞を受賞。料理づくりのほか、多数の料理本の出版や後進の指導も含め、彼の活躍はオーストラリアにおける食文化の向上に多大な貢献をしている。

 バンクでは、週日はバラエティーに富んだアラカルトメニュー。そして、週末(金、土)には、要予約だが、料理7皿と店のソムリエ厳選の7種類のワイン付きセットメニューが175ドル(料理のみ125ドル)で楽しめる。うれしいのは、ベジタリアン用のセットメニュー(同7種類ワイン付き160ドル、料理のみ110ドル)もあることだ。どのメニューも、季節ごとに装いを変えて登場する。

 まず、初めにアントレに選んだ鮪の刺身の季節野菜とレモンオイル和えは、日本人の舌にぴたりとはまる。レモンオイルの風味がみじん切りのバジルをまぶした、たたき風の鮪の刺身を邪魔することなく引き立てている。そればかりか、目を見張るのはプレゼンテーションの美しさ。日本文化に共通する上品で繊細な“吹き寄せ”を思わせる美を、白い皿の上で数種類の季節野菜の彩りを生かしながら見事に演出している。

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Banc
バンク

53 Martin Place, Sydney
phone:02-9233-5300
営業時間/12時〜14時30分、18時30分〜22時 土曜は夜のみ
日曜、月曜休み
※90席。車椅子アクセスあり。

 メインには、いつもは魚メニューを頼むのだが、今回はあえてビーフ・フィレ・ロッシーニにトライ。というのは、一般的にオージービーフはおいしくない、と思い込んでいる日本人に薦められるディッシュであることを再確認したかったからだ。実際、オーストラリア人は、広大な牧場で自然に生えている無農薬の牧草を食み、ストレスもなく育てられているオーストラリアの牛の肉こそ本物のビーフだと言い、私もこの国に来て初めてその本物の味に開眼したのだ。

 焼き加減はミディアムレア。ソフトでありながら、脂肪分が多すぎず、少なすぎず。味も実にあっさりとしていて、決して胸焼けがしたり胃にもたれることがない。これなら、誰にも自信をもって薦められる一品だ。

 リアムの料理の特徴は、体にやさしい料理づくりを目指している点にある。できるだけ高脂肪になることを避け、塩分、糖分、脂肪分を控えめにして調理されている。特に、肉や野菜などは軽く網で炙るなど、工夫を凝らしているので、われわれ日本人の口に違和感なく受け入れられるのだ。

 また、夫人のジャンさんが指揮をとる店のサービスは、気持ちよいほど行き届いている。店構えが実に立派なため、一見入りにくい感はあるが、勇気をもって一歩足を踏み入れれば十二分にその期待に応えてくれる店である。

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撮影・Adrian Landers
メニュー
Entree
鮪の刺身の季節野菜とレモンオイル和え $28.00
シェフお薦めのミニスターター $28.00
Main Course
ビーフ・フィレ・ロッシーニ $45.00
マトウダイのパンフライ・アーモンドソース
焼きアスパラガスとカリフラワーのフリッター添え
$45.00
Desert
シェフお薦めのデザート(2人前) $34.00
プチフール $14.00
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1オーストラリアドル=約72円 2003年4月8日現在
 
 

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