スペイン
マドリッド編
「エル・ブジ」で修業し、年に120種類の
創作料理を生み出すシェフの店
敬虔なカトリック教徒が多いスペインは、ヨーロッパの中でも保守的性格の強い国である。20世紀半ばから約40年間にわたり独裁政権に支配されてきた影響もあって、マドリッド市民は、新しいものに対していつも身構えており、それは食においても例外ではなかった。ところがスペインに民主化の波が押し寄せ、ヨーロッパ連合(EU)に加盟した20年前頃から、新しい文化が受け入れられるようになり、経済が上昇気流に乗ると、人々はより良いもの、一流のものを求めるようになる。結果、世界に誇るレストラン「エル・ブジ」なども誕生した。その「エル・ブジ」の天才シェフ、フェラン・アドリア氏のもとで約4年間修業した、セルジ・アロラ氏のレストランが「ラ・ブロチェ」だ。
マドリッド市随一のエレガントなカステリャーナ通りのすぐ隣、各国の大使館、一流の金融、保険会社など、外交やビジネスの中心地にある、五つ星のホテル・ミゲルアンヘルのビルディングの一角にこのレストランはある。入口にワインがずらりと並び、店内は淡い白クリーム色に照明され、どことなく地中海の砂浜をイメージさせる。現在55人収容できるが、今年からは40席くらいに減らす方針。顧客にもっとゆったりとした気分で食事を楽しんで欲しいからだという。
当年とって33歳の彼がオーナーシェフとして「ラ・ブロチェ」をマドリッドにオープンしたのは、4年前の秋だった。彼の現代的で独創性あふれる創作料理は、ほどなく保守的なマドリッド人たちの舌を驚嘆させ、オープンして2年目でミシュランの一つ星を、その翌年に二つ星を獲得した。メニューは旬の食材にあわせて約2カ月に一回、全面的に一新される。ということは年平均120種類の新創作料理がシェフの手から生まれるわけだ。
シェフのテイスティングメニュー(飲み物、税込みで約110ユーロ)も、2週間ごとに新しいものになる。テイスティングメニューで顧客の評判がよかったら、その時節の本メニューにリストアップされるわけだ。アロラ氏にとっての創作料理に限界という言葉はなく、常に新しい物を模索している。だからそのために週2日は完全に店を閉めて、創作料理の研究に費やす。毎週土日を閉められても、顧客たちはなんの不満も持っていない。逆に、「今度はどんな素晴らしい料理を考えてきてくれるのか」と楽しみにしている。
本日のメニューによると、創作料理は7種類、山と海の幸のメニューが、それぞれ4種類、シェフのテイスティングメニューは11種類あった。前菜に勧められて創作料理から、アサリのマリネを頼んだ。キュートなシャンパングラスのようなものにサービスされ、サルバドール・ダリ風の前衛絵画的に盛り付けされ、見た目にも美しく、食べるのが惜しいくらいだ。マリネソース和えされた繊細なパスタやみじん切りされた野菜と、アサリの風味とのバランスもよく、あっさりとした軽い舌触りかつ上品。お代わりをしたいほどだ。

- La Broche
ラ・ブロチェ
Calle de Miguel Angel 29
28010 Madrid
tel.91-399-3437
営業時間/14時〜15時30分、21時〜23時30分 土・日曜、イースター週間(8日間)、8月、12月24・25日休み
主菜は海の幸のメニューから、スズキの地中海風料理を。こちらはオーソドックスな、白身の魚の両面をこんがり焼いた料理である。その周囲に小さな焼き茄子が丸く切られてかわいらしく添えられている。スズキは驚くほど新鮮で、シェフが自慢するオリジナルクリームソースをかけて食べると、抜群においしい。ワインはガリシア産の白ワイン。さっぱりとして料理にもよくマッチしていた。
常に旬の新鮮な特選食材を仕入れ(特に魚介類は地中海北東沿岸のコスタ・ブラバ産だけしか使わない)、「エル・ブジ」に勝るとも劣らない創作度は満点。スペイン王室をはじめ、各界からのクライアントがそれを証明している。
(1ユーロ=116円 2002年1月17日現在)
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本日のメニュー アサリのマリネ 28.85euro スズキの地中海風 33.05euro 季節の果物 シャーベットとアップルゼリー添え 9.05euro ● ガリシア産白ワイン 22.30euro
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